変わらぬ想い





「カカシ、お主イルカと会ってみぬか?」
「はあ?」

三代目の執務室。朝っぱらから突然の呼び出しに来てみれぱ、開口1番言われた言葉が『それ』だった。
(朝っぱらから、何寝ぼけたことぬかしてんだ?このジジィ。)
心の中で悪態をつく。さすがの俺も、年老いたりとはいえ、里長である三代目に正面切って悪態をつく勇気はない。
「お主今、「朝っぱらから、何寝ぼけたことぬかしてんだ?このジジィ。』とか思ったじゃろう?」

────鋭い。枯れていても、さすが里長。すかさず、的を射た突っ込みが返ってくる。

「いやいや。でも、先程の『海豚』に会えとは、一体どういう事ですかね?」
俺は、突っ込みについては適当に流し、話を切り替えた。
「『海豚』じゃなくて「イルカ」じゃ。馬鹿者。
お主が初めて『認めた』下忍達の元担任じゃ。」
三代目も、先程の問答はどうでも良いらしく、そのまま話を続ける。
ま、言ってみれば『これ』は俺と三代目の朝のスキンシップみたいなもんだ。
「で、どうするんじゃ?会うのか、会わぬのか?」
「はあ…。ま、別に構いませんがね。」

(そんな見合いみたいな事して、一体どうするんですかね?)
俺は、最後まで言葉に出さず、目でそう問いながらも内心では、少々その『イルカ』という人物に興味を覚えていた。
いろんな意味で、『あの』ナルトをあんな風に育て上げた人物。
「イルカねえ…。」
俺は、その人物の名前を小さく咳いてみた。

そこへ、『コンコン』というノックの音が扉の外から聞こえてくる。
「実は、すでにイルカもここへ来るよう、呼んであるんじゃ。」
三代目が、当然のようにとんでも無いことを言う。
「…………。三代目…、それって人は、事後報告というんじゃぁ…。」
「ふん。お主はグズリだすと面倒だからの。先に手を打たせて貰ったわい。」
恨めしげに言う俺に、三代目は悪びれもせずサラリと言って除けたのだった…。

────この!たぬきジジィめ!!
コッソリ悪態をつくところが、我ながら情けない…。


「イルカか。入るがよい。」
「失礼しま…あなた─────!!」
三代目が声を掛けると、扉を開けるのと同時に入って来た人物が、驚きの声を上げる。
…ていうか、俺も驚いた。
陳腐な言葉だが、『心臓が早鐘の様に鳴り響く』とは正にこの事だろう。
何しろ、それは面識のある人物だったのだから。そして、頭の隅で妙に納得する自分がいた。
───なるほど、これが『あの』ナルトを育て上げた人物か、と。

「ああ:貴方がイルカ先生でしたか。」
俺は、内心の動揺をよそに、笑顔を作って言った


* * * * *



彼と出会ったのは、実は今回で三度目だった。
とはいっても、お互い前の二回では一度も名乗っていないので、先程までの様に名前を言われてもサッパリ分からない状態だった。
というより、俺にとつて名前などどうでも良かった。
こう言ってしまうと、最悪な印象っぽいがそうではなく、むしろその逆だ。
名前などどうでも良い程に、俺の中に刻み込まれている存在───…、そういうことだ。

最初の出会いは、子供の頃だった。俺はその時中忍になってから一年目、つまり七歳だった。
写輪眼というこの忌まわしい血系限界を引き継いでしまい、俺は、己を見失っていたのだと思う。
ムチャの連続で、任務を狂ったようにこなしていた。
そして、やはりそのムチャがたたったのだろう、疲労で注意力を失っていたのだ。

任務を受け、共に行動をしていた相手の裏切り。ムチャのせいで溜まっていた疲労。
その為、後ろから発っせられた殺気に気付く事が出来ず、いきなり背中を斬りつけられた。
咄嵯に身体が動き深手は避けられたものの、広範囲に斬られていた。
俺はそれでも何とか相手を倒すことができ、任務であつた重要機密書は辛くも、相手方へ届けることが出来た。だが、常に怠ってはならない体調の管理と、己の過信が招いた負傷は、予想以上に俺の身体に負担となり、最初の疲労も重なって、俺は心身共にポロボロだった。
それでも、何とか木ノ葉の里の森まで帰り着くことは出来た。
が、しかし、その暖かな陽気と、あつらえられたように存在した木の蔓で出来たベットは、俺の意識を失わせるには充分だった。

ふと目を覚ますと、少年が目の前に立っていた。
頭の後ろでキッチリと結わえられた黒い髪、鼻の上に走る大きな一文字の傷。
その黒い瞳は、何か言いたげに俺をじっと見つめていた。


───そう、そこには少年時代のイルカ先生が、立っていたのだ。
そしてこれが、イルカ先生との初対面の瞬間だった…。


俺は、自分が彼の気配に気付かなかったという事実に驚樗し、警戒した。
例え熟睡していたとしても、今までこれ程気付かなかいなんてことは、無かったからだ。
ズキズキと、止血だけを行った背中の傷が痛む。


『もし、こいつが敵だったら俺は殺される。』
先程の戦いですら、思わなかった事まで思う。


「なあ、お前さっきから何見てンだよ。」
俺は、動揺を隠しつつ尋ねた。すると
「昼寝をしようとここに来たら、オレの秘密の場所にお前が居て、「どこのどいつだ」て、顔を見てやろうと思って来たらお前の額に額当てがあって、それで…」
彼は、捲し立てるように一気に言ってから、一度言葉を切り
「ショックで頭グルグルしてた。こいつ、オレと同じ位の歳なのにもう下忍なのか…て…うらやましいと思った。」

一目で分かる、『嘘のない本当の言葉。』
俺は、更に動揺した。だけど同時に、嬉しさでいっぱいだった。
顔が緩んでいくのが分かる。
嘘と疑心ぱかり見てきた俺にとって、見栄も何もないその素直な言葉はすごく嬉しかったのだ───…。




───あの時の俺は、きっと相当間抜た顔をしていたのだと思う。
貴方はじっと俺の顔を見て、固まっていたから…


ズキンッ

先程まで、動揺と嬉しさで感じなかった背中の傷が、また痛みを訴える。

「お前!怪我してるのか?!!」
彼が突然そう言って、俺に手を伸ばして来た。

(な・・?!!こいつ!!?)

先程までの嬉しさは吹っ飛び、最初の警戒心が甦る。
「触るな!!」
殺気を込めて言う。
「お前…」
「触ンな。」
俺の殺気に驚いたのだろう、呆然と仔む彼。俺は、その間に立ち去ろうとした。

…─────が、
「待てよ。」
腕を捕まれる。
「触るなって言ってンだろ!」
その手を払い除けようとしたが、しっかり掴んだ手は放れなかった。
「お前、怪我してんだろ?だったらちゃんと手当ぐらいしろよ。
…その様子だと、お前何もしてないんだろ?」

(─────っっ!!
何だって、さつきからバレてんだ?!すげえ、ニブそうな顔してるクセに!!!)
心の中で舌打ちをする。

「いいんだよ!これは。…いいからほっとけよ!」

(そうだ、いいんだ。
これは、自身の過信と、体調の管理を怠ったことに対する己への罰なのだから…!)

俺は腕を振って捕まれている手を外そうとするが、彼は意地になったように、逆に強くしがみついてきた。

「馬鹿か?お前。…下忍だろ?
木の葉の額当て持ってんだろ?!だったら自己管理ぐらいしっかりやれよ!」

「・・・・・・っ!」
彼の言葉が突き刺さる。

『自己管理が出来ていない。』
まさに、痛恨の一言だった。
自己管理を出来なかった事への戒めが、それを更に、自己管理が出来ていないと言われたのだから。
そして、沈黙して佇む俺に、彼は怪我を見せろと言った。
何故かと聞くと、彼は事も無げに言う。
「怪我してるから・・。普通やるだろ?お前こそ何言ってんだよ。」

『やらねえよ・・』
心の中で即答する。
それが、友人知人、もしくは共に任務をこなしている相手なら、分かる。だけど、彼とは今初めて会ったぱかりだ:普通はやらないし、少なくとも、俺はした事ない。
それに─────・・
例え、友人知人や、共に任務をこなしていようとも、信じることなど出来やしない。
信じてはいけない。
俺は、それを学んだのだから。

暫く問答を続けるが、なかなか引かない彼に俺は怒鳴りつける。
「いい加減にしろよ!普通はしないんだよ!!
大体!もしお前がオレの敵だったらどうするんだよ?!
お前が敵でない証拠が何処にあるって言うんだ?!!」
彼の顔が曇る。
(傷付けてしまったのだろうか?)
一瞬、後悔の念にとらわれる。
だが、何やら下を向いてうんうんと悩みだした彼に、興味を抱き次に来る言葉を待つ。

「そうだ!!証拠じゃないけど、もし、お前の怪我の手当をしている最中に、オレが変な行動を起こしたら・・お前、オレを殺せ。」
突然顔を上げると彼は、サラリと言った。
「な…?!」

俺は、あまりなその一言に、そのまま言葉を失くす。

─────『殺せ』。
彼の口からサラリと出た一言。
彼にとっては、それ程重い言葉ではなかったんだと思う。きつと、約束を破るつもりなど微塵も無かったから。だから、軽く出た言葉なんだろう。でも、あの時の俺には、それはとても重い言葉だった。

「そうだそうしろ。それが一番手っ取り早い。」
呆然としたまま固まっている俺へ、彼が嬉しそうに言った。
「そう言う訳だから、早く傷口見せろよ。な?」
追い打ちとばかりに被せるように言うと、彼はニコリと笑みを零した。

グラリ・・

頭の中が揺れる。そして、俺はその笑顔に逆らえなかった。
気が付くと俺は背中を向け、彼に傷を見せていた。


「────っっ!!」
傷口を見た彼が、絶句したのが分かる。
たぶん、彼にとってあれ程の傷は、初めて見るものだったのだろう。
きっと、逃げ出したかったに違いない。除き見た彼の眉間に、深く皺が刻まれていたのを覚えているから。

彼は、それでも無言で傷の手当を始めた。
その手が、わずかに震えているのが分かる。

「おまえ・・、何だってこんな酷い怪我!!誰にやられたんだ?!
これ、刃物の傷だろう…?!!」
傷の手当を、意外にテキパキと終えた彼が、怒ったように言った。
俺は、答えられず押し黙る。
それに、何故彼がそんなに怒っているのか分からなかった。
「何で黙ってんだよ!そんな酷い怪我負って…そんなの下忍が負う怪我じゃないはずだ!!」
沈黙する俺に、苛立ったように彼が言うが、何かに思いあたったのか突然
押し黙る。
そして…

「おまえ・・中忍なのか?一年前に噂になっていた、あの。」
確かめるように聞いてくる。

気付かれた───・・という事に、何故か胸が痛くなる。
俺がこんな歳で中忍であるという事と、この忌むべき写輪眼の為に、又あんな目で見られるのだろうか?この目の前にいる人物にまで・・・そう思った瞬間、ズキズキと胸の痛みが強くなった。

ガバッ
「?!!」

突然のことで、頭が真っ白になる。
気が付くと俺は、彼に抱き締められていた。身体は、すっかり硬直してしまって動けない。
抱き締めてくる彼の腕が小刻みに震えていて、泣いているのが分かる。
しかし、何故彼が泣いているのか分からなかった。ただ、俺の為に涙を流してくれている・・という事実だけは鮮明に理解出来た。
そして、そんな彼の行為がとても嬉くて。
だけど…

離れなければ・・離れなければ・・
離れなければ・・離れなければ・・

頭の奥で警戒音が鳴り響く。

しかし、どうしても身体は動いてはくれない。
むしろ、そんな身内の警戒音すら無視してでも“動きたくなかった”。
この暖かな温もりを、もっと感じていたいと思った。
今だかつて、これ程までに感じたことのない、その温もりを─────・・・

どれほど時間が経っただろう。
時間にしてみれば数分だったように思えるが・・・

俺は、ふと我に返った。
そして、実は物凄く恥ずかしい状態だと言うことに気付く。
同じ中忍仲間達には、絶対に見せられない場面。
そう気付くと、だんだん顔が火照っていくのが解った。
動揺の為に、身体が身じろぐ。

「手が・・背中、傷に当たって痛い・・・。」
本当はちっとも痛くなど無かったが、『恥ずかしいから』なんて、とてもじゃないが言えなくて…情けないぐらい細い声で、嘘を吐いた。
すると、彼が慌てたように言った。
「あっ・・・悪いっっ!!
大丈夫か?!傷、すごく痛むのか?!」
抱き締めていた俺の身体を放し、心配そうな面持ちで彼が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫だ!これぐらいっっ!!」
俺は、赤面した自分の顔を見られたくなくて、そう言いながら慌てて顔を逸らした。
が、どうやら見られてしまったようで・・・
「何だ、おまえ照れてるのか?」
「な?!そ・・そんなんじゃないっっ!!」
慌てて否定する俺の様子を見て、何故だか彼はとても嬉そうに笑った。そして・・・
クシャリと頭を撫でられる。
「お前は、えらいなあ。だけどお前、もう少し他人を信じろよ。確かに“中忍”は、そうやすやすと他人を信じちゃいけないかもしれないけど…
すげえ、無責任なこと言ってるかもしれないけど…
それじやぁ・・あまりにも悲しすぎるから・・さ。」
今にも泣きそうな悲痛な面持ちで、しかし、それでも笑顔を浮かべて彼は言った。
その言葉は、俺の心の中に深く染み込み、広がる・・・
そして、彼だったら、彼のような人間だったら、信じることが出来る。
───そう思った。
だから俺は、微かに頷いて見せた。



『信じる』ことを否定しようとしていた俺の心を、一瞬にして引き戻した彼の言葉は、一生着いて回るだろう。そう、その時直感的に思ったものだが・・
それは、見事に当たっていた訳で────・・・。

貴方の、その言葉のお陰で俺は・・・
自我を失うことが、無かったのだと思う。
自分というものを、保ち続けていられたのだろうと思う。

・・・そう、貴方のその言葉のお陰で俺は、救われたんだ────。




「お前さあ…『先生』みたいだよなあ。」
「え?」
俺が何気なく言うと、彼は驚いた顔を向けた。
「お前、先生に向いてるよ。
将来、先生になったら良いンじゃないか?うん、マジで。」


───こいつには、あんな闇に染まって欲しくない。
忍者になる以上、それは不可能であることは、分かっている。
だけど教師になれぱ、任務に就かなくてすむ様になるんだ。
だから────・・

「そうか?そう思うか?
お前、オレは先生なれると思うか?」
俺が言った言葉は、予想以上に彼には嬉しかったらしく、はしゃいだ様な声が返ってくる。
「うん。きっとなれるよ。」
この時初めて俺は、本当の笑顔が出来たような気がした。


「じゃあ、先生志望としてお前に最初に言っておくことがある。」
彼が、得意気な顔で言ってくるのに対し、俺は首を捻って続きを促した。
「傷の手当はちゃんとすること、だ。
今回みたいに放っておくなよ?」
諭すような、しかし暖かい笑顔で彼は言ったのだった───・・。



* * * * *



それから十数年後だ。彼と、二度目の出会いをしたのは…


あれは、依頼を滞り無くこなし、三代目に報告しに行く途中だった。
暗部への依頼だ。当然、そういった依頼内容だった訳で、Aランクだった事は確かだと思う。肩に大きな痣を抱え、えらく気が高ぶっていたということだけは覚えている。

三代目の、屋敷へ向かう途中の道筋。
前方から歩いて来る人物を見て驚く、彼だ。
十年以上経って容姿が変わっていても、すぐに分かった。
鼻の上を、一文字に大きく走る傷が、彼の大きな特徴と言えるが、それ以上に彼の取り巻く空気、チャクラが彼であることを告げていた。
だが、前方から歩いて来るのが彼であっても、声など掛けられる訳がなかった。


『傷の手当はちゃんとすること、だ。今回みたいに放っておくなよ?』
彼が別れ際に言った言葉が、頭の中を過ぎる。


まさかこんな時に、こんな所で、彼に出会ってしまうなんて・・・

ズキズキと今までそれ程感じなかった肩の痣が、突然痛みを訴え始める。
だが、大丈夫だ。いつも通りにしていれぱ、絶対にこの動揺を表に出さない自信が、俺にはある。
彼に・・こんな俺の姿を気付かせたくなかった。
そして、そのまま何事も無かったかのように、通り過ぎてしまう筈だった・・。
が、しかし、丁度すれ違う瞬間、突然腕を掴まれた。
情けない話だが、自分の内情を隠すのに必死で、反応が遅れてしまったのだ。
モロに腕を掴まれ、引き寄せられる。

「アンタ何やってんですか?!
怪我してんでしょう!ちょっと一緒に来て下さい!!」
怒鳴りつけられ、そのままグイグイと腕を引っ張られる。
そして、俺はそんな彼の行動に、全く逆らえないままついて行った。
・・と、いうより、完全に思考がブッ飛んでいた。

───
どうして、いつも彼には俺の怪我の事が、分かるんだろう?
三代目は別だが、誰一人として、今まで他人に自分の怪我を悟らせたことなどなかった。
確かに動揺はしていた。
だが、昔の未熟な頃ならともかく、現在の自分が、それを表に出してしまう様なことなど無い…筈だ。
ひょっとして、彼も俺のことを覚えていて・・いや、まさか、な。
それに、だからといって俺の怪我に気付いた理由にはならない。


「よく、俺が怪我してるの分かりましたね?」
手当が終わった後、俺は疑問をはらすべく彼に尋ねた。
「ズパリ、『勘』ですね。」
彼は、昔の頃と変わらぬ調子で答えた。
「俺、アカデミーで教師をやってるんですが、子供達の中にはたまに、強がって怪我を隠す子供がいて、何となく分かるんですよね。クセとかあったりして。それを、見過ごさないよう心掛けていたら…、
どうも俺の方がクセになってしまって・・・」
「探すのが?」
「ええ、探すのがです。」
彼の、その変わらぬ笑顔を見て、俺は嬉しくなる。
そして、俺が昔、自分のエゴで言った言葉はあながち間違っていなかったのだという事を、確認した瞬間だった。
「なるほど、アカデミーの先生でしたか。何というか、イメージ通りですね。」
と、言うより正に天職なのではないだろうか、と思う。
アカデミーの教師というのなら、彼は中忍であるという事は間違いない。
その彼が、上忍である俺が必死で隠していた怪我を、『勘』で気付いたのだ。
まあ、多少の動揺があったにせよ・・だ。
それは、きっと生徒の事を思いまくった結果だと言えよう。
それにしても、──────すごい勘だ・・・。



そしてその後、少々の雑談を交わした後、俺は彼の元を去った。
自分でも驚く程、それはもうあっさりと・・・
俺はきっと、満足していたのだと思う。
彼の、変わらぬ空気と、その笑顔に。
そして、何故だか確信めいて思っていた。
きっと、彼とはまた会える、と。二度あることは、三度あるというしな。
だから、名前をまたも聞き損ねてしまった事は、それ程気にならなかった。
いつか、また出会った時に聞けれぱ良いと思いつつ─────・・・



* * * * *



「何じゃ、お主達すでに知り合いか?」
「ええまぁ・・・多少面識はあるんですが、ね。名前が・・・」
三代目が聞いてくるのに対し、俺は素直に答えた。
「まったく、しょうのない奴らじゃ…
とっとと、自己紹介せんか!!」
呆れたような口調で三代目が言った。
「はたけカカシです。何か、今更という気もしますが。
とりあえず、初めまして・・・かな?」
「初めまして、イルカです。
ナルト達のこと、よろしくお願いします。」
そう言って
、『彼』ことイルカ先生は、
ずっと変わらぬその笑顔を俺に向けたのだった────・・・。



* * * * *



 こうして、都合三度目にして、俺はようやく『イルカ先生』と本当の出会いを果たすことが出来た。
三代目には、『寝ほけたジジィ』だとか『枯れたいても』だとか、しまいにゃ『たぬきジジィ』などと思っちゃったりもしたが、感謝してますよ。ホント★
だけど、良いんですか?三代目。俺に彼を紹介なんてしちゃって。
職業と名前を知って、更には会いに行く『名目』すら出来上がってしまった今、俺は彼に毎日だって会いに行っちゃいますよ?
もちろん、今更何言っても遅いですけどね。





────そうだ、もう遅いんだ。

俺は、彼と出会ってしまったのだから。

もう誰にも止められやしない。

彼を求める俺のこの乾きを。

そう、それが、例え俺自身だったとしても─────・・・。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


・・・ところで、あの話題に出てきた怪我を隠す生徒というのは、ナルトとサスケの事ではないだろうか?ふと、そう思う。
とすると、俺はナルト達と同レベルという事か・・・。
何やらそう思うと情けなくなるが、ま、良しとしよう。







終劇




いや、長い長いお話にお付き合い頂き、誠にありがとうございます!
これは、『朱色の絆』の那岐版カカイル出会い編のカカシ先生視点…ということで。
お前こんなクサれたこと思っとったんか!!
と、目一杯
あきれてやってください!!(苦笑)
いや、面白いですよね!片方の視点の反対から見た視点というのは…。
全然平気で全く違うこと思ってやがる、こいつら…みたいな。ばかじゃ〜ん!て…(笑)

各視点での食い違い具合を楽しんで頂ければ幸いかと思います!
この話の醍醐味はまさにそこかと!!!(大笑)
あ!あと、冒頭の三代目とカカシ先生のやりとりも実はお気に入りだったりします!
ああいう、しょーもないやりとり、那岐は大好きです!!!













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